社長が果たすべきたった一つの役割
ああ、暑い。
暑いですね。
今日は社長が果たすべき役割について思うところを書き留めておこうと思います。
むか~し、むかし、私は起業するにあたって、いろんな経営者の本を読み漁っていた時代がありました。ホンダやパナソニック、ソニーなど、どんな人が経営者で、どんな想いで会社を興すにいたったのか、熱心に読みふけりました。
いまはブラック企業で有名になってしまいましたが、ワタミの渡邉美樹さんの起業当時の話を読んでいたとき、こんなことを思いました。
「渡邉社長は、居酒屋をやっているのに料理人の経験がないみたいだ。自分が料理を知らないのに、どうやってそのお店を経営する社長になったんだろう」
そのときに気が付きました。世の中には、その分野について精通していて、それを突き詰めていって会社を立ち上げる人と、特にその分野について詳しくないにも関わらず会社を経営している人がいる。前者はなんとなく想像つきますが、後者はどうやって経営しているんだろうか。
当時、すごく不思議だった、この事実。実際に会社を経営するようになって、いまではその理由がよくわかります。
その理由は、ビジネスが団体スポーツだ、ということです。
ちょっとわかりにくいかもしれないので、もう少し補足します。
会社は大なり、小なりありますが、どこもお金を得る仕組み(ビジネスモデル)という大きな枠組みの中で、商品があり、お客様に知ってもらう取組があり、お金を払ってもらって、それらの数字を管理し、従業員に還元し、残ったお金を再投資する、というサイクルがあります。
実は会社の中で社長だけが、このどの部分を誰にさせるか(自分でしてもよい)を決めることができます。つまり、メンバーの適性をみつつ、チーム編成を考え、自分も含めたポジション(役割)を決定できる立ち位置にあります。
居酒屋の例に戻ると、居酒屋も立地やお店のコンセプトなどの前提は別として、お客様に来店してもらい、料理を提供し、その対価にお金をもらうサイクルの中で、料理の部分を誰かに任せる選択もできるし、自分でやることもできる、ということだったのではないでしょうか。
実際に会社を経営していくと、立ち上げ期は収支を安定させるために、ある程度現場に入ってすべてのサイクルに関わって微調整をしていく時期もあります。逆にある程度安定してサイクルが回るようになったら、ほぼすべての工程を人に任せ、「誰も考えていないことを考える」ことに注力することも、チームにとっては大切になります。
そんなこんなで「社長はこうあるべき」というのは実はチームの構成員の能力や会社のステージによって大きく変わってくるものだ、と思うのです。
そういう意味では、社長が果たすべき役割とは、「組織の状態を客観的に把握し、そこに足りていないことを補うこと」であると思います。もちろん、会社のあるべき姿があった上でのことですが。
今ではブラック企業の権化みたいなワタミですが、渡邉美樹さんの起業のときの話はいまでもたまに読み返しては、励みにしています。起業を目指す方は一度読んでみてもいいかもしれないですね。
経営者になりたい人に読んでほしい話
だいぶご無沙汰してしまっていました。
そんな体たらくにも関わらず、アクセスが定期的にあるようで、ひさしぶりに確認すると、なんと延べ7412回!!も見てくださっているみたいです。
ありがたいですね…。
ひさしぶりですが、「経営者になりたい」と思っている人に、自分が経験したことを書いてみたいと思います。
いきなりですが、あのパナソニックの創始者、松下幸之助さんは書籍『道をひらく』の中の「岐路にたちつつ」というコラムの中でこんなことを言っています。
動物園の動物は、食べる不安は何もない。他の動物から危害を加えられる心配も何もない。(中略)
しかしそれで彼らは喜んでいるだろうか。その心はわからないけれども、それでも彼らが、身の危険にさらされながらも、果てしない原野をかけめぐっているときのしあわせを、時に心に浮かべているような気もするのである。(中略)
やはり次々と困難に直面し、右すべきか左すべきかの不安な岐路にたちつつも、あらゆる力を傾け、生命をかけてそれを切りぬけてゆくーそこにこそ人間としていちばん充実した張りのある生活があるともいえよう。
困難に心が弱くなったとき、こういうこともまた考えたい。
一つの事業なり、会社なりを経営していく、というのは本当に困難の連続です。人が辞めていくこともあれば、事業の不振で現金が減っていき、経営者としての孤独の中で、なんとかかんとか生き抜く道を考えていかなければいけないこともあるでしょう。何でこんな苦労をしないといけないのだろう、と泣きたくなったことはどんな経営者でも経験があるのではないでしょうか。
そんなときに、先輩経営者の言葉は本当に響くものがあります。こういう偉大な先人も同じように悩んで、こういう言葉を残していってくれたんだな、と思うととても感慨深いものがあります。
自分は起業に至る前にこんな悩みを持っていました。
「もう少し、サラリーマンを続けていろんなノウハウを得てから辞めるか、それとも、すぐに起業・独立して経営者の道を歩み始めるか」。
そのときにある経営者からもらったアドバイスはこういうものでした。
「経営者とそれ以外は全く違う。経営者の経験は経営者以外では積めない。だから早ければ早いほどいい。」
そして、自分はそのアドバイスに従って、会社を辞め、起業しました。
今、このときのことを振り返ると、あのときのアドバイスは正しかったんだなぁ、と実感します。もし、あのタイミングで会社を辞めてなかったとしたら、今の自分はここまでの認識に至ることができたかな、と考えると、そう思うのです。
「経営者になりたい」そう思っている方がいたら、ぜひ一緒に苦労しましょうといいたいですねー。松下幸之助さんだって、稲盛和夫さんだって、みんな死ぬほど苦労してるんだから。
なんかいい話っぽくなったので、結局、アフィリエイトかよ、という感じで落としときます。^ ^ ということでまた、いつか。
指定管理者制度ってどうなの?~まだまだブラックボックスな実情に迫る~
だいぶ日が空いてしまいましたね。。
そんなだめだめブログでもアクセスが(超低空飛行ですが)あったりするので、
またぼちぼちと再開していこうと思います。
さて、今回のテーマは「指定管理者制度」。一般の人からしたら相当にマニアックなテーマです。このご時世、インターネットを駆使してもまだまだブラックボックスな存在です。もし、地域での起業に興味があるなら、この制度について知っておいて損はありません。書ける範囲でこのブラックボックスの中身を書いてみたいと思います。
指定管理者制度とは何か
「指定管理者制度って?」という人が大半だと思います。この制度に関して、Wikipedia上では以下のように説明されています。
指定管理者制度(していかんりしゃせいど)は、それまで地方公共団体やその外郭団体に限定していた公の施設の管理・運営を、株式会社をはじめとした営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させることができる(行政処分であり委託ではない)制度である。*1
簡単にいえば、市や町が運営していた観光施設を民間事業者に運営代行してもらう制度のことです。さてさて、どんな場合に、この制度が検討されるんでしょうか。
具体的には、これまで自治体が運営してきた施設が不採算になり、議会で問題視されたりすることが引き金になるケースがあります。こうなると、(妄想ですが…)市役所の中では「やっぱりわれわれ行政の運営では限界だな。人気がある施設を運営している○○株式会社などに運営をお願いできないだろうか」という話し合いがなされます。
そこで、「運営を民間に任せることで改善が見込める施設」と判断されれば、指定管理者を公募により選定し、施設の運営を外部委託をすることになります。
わざわざ、行政が運営していた施設を民間に委託するのはなぜでしょうか。
なぜ、行政は指定管理者に任せたいのか?
一般的には、民間運営の方が柔軟性のある施設の運営を行なうことができるため、利用時間の延長や施設運営面でのサービス向上などが期待できるとされています。
例えば、施設を繁盛させられる民間事業者は、プロモーションの方法や旅行会社とのネットワークなど、「繁盛させられるノウハウ」を持っています。そのため、行政が運営するより集客を増やすことは実はそれほど難しくはありません。(←と、言っても、もちろん難しい事例も多いですけど…)
蛇足ですが、実際に指定管理者に指定されたある施設では、初年度から直近の年間売上実績に対して2倍ぐらいまで売上を伸ばせることができた例もあります。ま、、これはたまたま集客に努力をしてこなかった施設のため、少しの変化でも劇的に効果があった事例ですが。
さて、もし、あなたが地域での観光事業に興味があるなら、この指定管理者制度は狙い目かもしれません。ただ、そこには落とし穴も。。
指定管理案件が狙い目な理由3つ
まず、そもそも論。地域にはまともなプレーヤーがいません。これは悲しきかな、地域で活動するとよくわかります。理由は、高齢化と若者の田舎離れ。これによって、「ある程度社会経験があり、自分の頭で考えて、ものごとを進めていける人」が極端に少ないです。ということで、きちんとした戦略を立てて、必死に頑張れば、都会に比べれば相対的に結果が出やすい状況になっています。
二つ目は、それまでの行政の運営がダメダメ過ぎることです。行政というのは、ある意味では、最も観光施設に不適切な組織ではないでしょうか。そもそも、施設としてお客様を増やすことに全く待遇面でのインセンティブがないために、努力をしないでも全く問題がありません。
さらに、なんでもかんでも外部に丸投げすることが習慣化されているケースも多いため、経費削減できる幅が大きいことも指定管理者にとっては魅力の一つ。そんなこんなで、民間にとって当たり前のことをきちんとやれば、それだけで自然と採算が改善される場合も少なくありません。
最後は、行政が経費の一部を負担してくれることです。民間が自社で商売をする場合、建物などの修繕を利益から賄っていくことは当然ですが、指定管理者制度の場合は違います。なんと、行政が事前に決められているルールに基づいて、費用を負担してくれることになっています。
例えば、「100万円以上の修繕は行政が負担する」という形で決まっているため、一番痛い高額な出費を負担しなくてよい場合も珍しくありません。
最後に
どうでしょう?かなり魅力的な案件だと思いませんか?でも、そこにはそれなりの落とし穴があります。それが、指定管理者の選定方法である「公募」です。次回はこの「公募の落とし穴」に関して書いてみたいと思います。
ちなみに、応募書類作成には膨大な時間が掛かります。そういう意味で時間の節約のためにも、この本は投資対効果が高いです。
これで勝てる!指定管理者制度―事業計画書作成のポイント (図解中心でわかりやすい実践・実務の書)
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また、「どんなことを書くと行政ウケがよいのか」で迷ったら、以下のサイトもおすすめです。自治体担当者だった方が書いているようで、行政サイドの視点を勉強できます。
www.shiteikanricenter.co.jp
地域ビジネスが行き詰ったときに読んでほしいこと~「主役戦略」と「脇役戦略」
普通の人が読んで、役に立つかどうかといったら、全く役に立たないけど、回りまわってどこかの誰かの役に立つこともあるかも、ということで地域での商売が行き詰ったときに試してもらいたいことをご紹介します。
「最近、なんか地域での商売に行き詰まりを感じるな~」という方の参考まで。
商売には「主役戦略」と「脇役戦略」がある
みなさんは、自分の商売のやり方が「主役」なのか「脇役」なのか、
意識して事業をやっていますか?
地域で観光をする中で、事業の立ち位置が意識できるようになると、自社の経営改善のために打てる手のバリエーションも増えてくると思います。。
例えば、テーマパークは「主役戦略」向き、旅館やホテルは「脇役戦略」向きなどそもそもの事業の性質によっても、主役向きと脇役向きがあります。
以下、ちょっとした持論になりますが、「主役戦略」と「脇役戦略」についてご説明します。
「主役戦略」とはお客さんの目的になろうとすること
「主役戦略」とはお客さんの目的になろうとすることです。
「え、どういうこと?」という方、地域で繁盛しているお店を例に説明してみます。
繁盛しているお店には「主役戦略」を採っているものと「脇役戦略」を採っているものの2パターンがあります。
「主役戦略」を採用しているお店の具体例
地域の特産品を生かした、そこでしか食べられない料理が売りのお店
「脇役戦略」を採用しているお店の具体例
一日1000人が訪れる観光地の中で最高の立地にあるお店
「主役戦略 」と「脇役戦略」の違いがなんとかなくわかるでしょうか?
「主役戦略」とは、自社の魅力を「売り物」にしている戦略で、基本的に自社に来ることをお客さんの旅行目的にしよう、という経営努力のことです。つまり、自社がお客さんの目的地状態です。
反対に、「脇役戦略」とは、自分以外の何かの魅力を「売り物」にしている状況で、別の目的で来ているお客さんを取り込もうという経営努力のこと。ある意味では、自社はおまけ状態で、場合によっては仕方なしに利用することもあります。
まだピンときていない方のために、別の例でも説明します。
あなたが例えば、経営難の旅館を立て直さないといけない経営者だとします。
いろんな売り上げを伸ばす方法があると思いますが、あなたならどうしますか?
「内装をリニューアルして部屋の魅力をアップする」
「腕のいい料理人を雇って、食事を強化する」
どちらも良い方法ですよね。うまくいけば、きっと売り上げも上がるでしょう。
これは、前述した「主役戦略」と「脇役戦略」どちらでしょう?
この例、実はどちらの方法も「主役戦略」に乗っ取った手段になっています。
経験として人は自社の経営を無意識のうちに「主役目線」で考えてしまいます。もちろん、「主役目線」は何も悪くありません。自社で本当に価値が作れれば、売り上げも上がるでしょう。
しかし、もし、「主役戦略」でなんらかの行き詰まりを感じたら、ぜひ「脇役戦略」も試してみる価値があります。
行き詰ったら「脇役戦略」で商売を考えるとうまくいく
「脇役戦略」を採用するには、自分の商売だけを考えていてはいけません。
ちょっと目線を高くして自分たちの事業がある地域全体を見渡してください。何かお客さんにすでに評価され、お客さんが行動する目的になっている場所・お店・地域資源はありませんか?
何かある場合、一定の価値を見出されている「それ」と、自分の事業をつなげることはできませんか?
先ほどの経営難の旅館のケースに戻って「脇役戦略」で考え直してみると、どうなるでしょう。
例えば、車で行ける距離に良いレストランがある立地なら(普通は何かしらありますよね)、自社での夕食提供をいっそのことあきらめ、そこのレストランへの送迎をして、泊食分離型の宿泊プランなんてどうでしょう?
また、自社で夜の肝試しツアーを企画して、それを目的に地域に来訪してもらい、結果的に自社での宿泊客を伸ばす、というのも実際に効果があるはずです。
(夜に出かけたら、帰宅が面倒になって泊まりたくなるもんですよね。)
この「脇役戦略」、コスト面でも実戦でかなり使える戦略でもあるんです。
「脇役戦略」は経営資源がなくてもできる
「脇役戦略」は、特に経営の立て直しなど、あまり経営資源(人・モノ・金)に余裕がない場合に効果を発揮します。なんせ、他力本願ですので、謙虚な気持ちで周りにお願いさせできれば、相手の価値にちゃっかり便乗することができるからです。
例えば、先ほどの二つの例。自社で内装のリニューアルをすることや、料理人を雇って食事を強化することを考えると、夕食提供をあきらめて、送迎する方がずっと安く、実行できることがわかります。
はじめに戻って、テーマパークは「主役戦略」向き、旅館やホテルは「脇役戦略」向きといったこともわかりますよね。テーマパークはそこを来訪目的にする以外の方法でお客さんに来てもらうことは難しい事業になります。逆に、旅館やホテルはそこでの宿泊体験以外にも、温泉目的に泊まる場合や、観光の拠点として仕方なしに泊まる場合など脇役としても十分に商売が成立する可能性があります。
というわけで、納得いただけたかどうかわかりませんが、実際に事業をやる中で、こんなことを考えていますよーという一例でした。
地域おこしや地域活性化でみんなが誤解していること
今年で地域の観光業に携わって、丸5年が経過しました。たかが5年。とはいえ、時間が経ったいまだからこそわかってきた地域の実情もあります。今回は地域に新しく入ってくる人たちが誤解しがちな地域の実情についてまとめてみたいと思います。
- 新しいプレーヤーとしての地域おこし協力隊
- 産官学連携の形で活動する大学の先生と学生たち
- 「地域の人たちはお客さんが少なくて困っている」は間違い
- 本当の問題は若年人口の流出+高齢化
本題の前に
地域においては、都市部と違ってそもそもプレーヤーの数がとても少なく、非常に狭い世界でものごとが動いています。それこそ、新しいIターン夫婦が1組入るだけでも、すぐに噂でわかるレベルです(冗談ではなく、ほんとです。苦笑)そこで実情について述べる前に、まず、地域に新しい人が入ってくる典型的な例として「地域おこし協力隊」や大学生たちを取り上げたいと思います。
新しいプレーヤーとしての地域おこし協力隊
地域におけるメインプレーヤーは昔から住んでいる地元の方たちであるのは、どこの地域でも同じだと思います。しかしながら、ここ数年、国の後押しもあり、「地域おこし協力隊」という人たちが入ってくるようになりました。みなさんご存知でしょうか?
「地域おこし協力隊」とは、総務省が担当する移住促進+地域活性化の施策の一つで、簡単にいえば、自治体が地域の諸問題の解決を目的に、都市部に住む若者などを募集・採用し、地域で活躍してもらう事業のことです。
総務省のHPでは、「地域おこし協力隊制度」のことを以下のように紹介しています。
都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住⺠票を移動し、⽣活の拠点を移した者を、地⽅公共団体が「地域おこし 協⼒隊員」として委嘱。隊員は、⼀定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの⽀援や、 農林⽔産業への従事、住⺠の⽣活⽀援などの「地域協⼒活動」を⾏いながら、その地域への定住・定着を図る取組。
リンク先をみると、年度別の隊員数の推移が載っていますが、平成21年には全国で89名だけだった隊員が直近の平成28年には3,978名と激増していることがわかります。近畿地方でも、一つの自治体で5~6名の隊員が在籍していることも珍しくなくなりました。
身の回りの例でいえば、この地域おこし協力隊の方たちは、「農業をやりたい!」という人もいれば、「アートをやりたい!」という人もいたりと、わざわざ都市部から小さな町にやってくるだけあって、個性的なメンバーが多いように感じます。
産官学連携の形で活動する大学の先生と学生たち
他の新しいプレーヤーとしては、大学の先生とその学生たちがいます。彼らは定住するわけではないですが、やはり地域を誤解して入ってくる、という意味でここで挙げさせていただきました。
地域では商工会などが産官学連携などの国の補助金の受け皿となり、観光系の大学と連携することがよくあります。学生さんにとっても、比較的楽しいフィールドワークになるため、新聞などを注意してみていると、様々な地域で大学生がヒアリングなどを実施し、観光周遊プランや企画を自治体や商工会向けに発表しています。
以下は、北海道の中標津町での大学生の活動の記事になります。大切なのは、この研究発表会が実際に地域に生かされたかどうか、という点になりますが、だいたいそこまでは新聞などのメディアはフォローしていません。
さて、ここまで地域に新しく入ってくる人たちを見てきましたが、地域おこし協力隊や大学との産官学連携は地域の課題に合っていて、成果が出ているでしょうか?
残念ながら、実はどちらも、ほとんど成果が上がっていない、というのが実感です。うまくいっていないのは、地域おこし協力隊も産官学連携も「地域の課題設定」の部分で間違っているのが原因ではないかと考えています。
「地域の人たちはお客さんが少なくて困っている」は間違い
(当方の狭い経験からでしかありませんが)結論から言うと、地域の観光分野の人たちはお客さんが少なくて困っているわけではない、のです。
では、何に困っているか。ずばり、担い手不足です。
地域の状況をまだよく知らない人たちは、先入観も後押しして「地域は来てくれるお客さんが少ないことで困っている」と思い込み、「お客さんを呼び込める斬新なアイデア」を考えれば、地域の人のためになると思う傾向にあるように思います。しかしながら、実際に不足しているのは、その斬新なアイデアを実行する「人」であり、「実現まで周囲を巻き込める人材」の方なのだと思います。
この誤解をした状態で、地域に来ると何が起こるでしょうか。観光分野に来る地域おこし協力隊の人たちを見ていると、まず着任して、熱心に活動しようと動き出すと、そもそも、それほど地域の人が困っていないことに驚くのではないでしょうか。また、そもそも地域をおこすために来たのに、地域の人が自分たちの地域を活性化してもらいたいと思っていないケースも少なくありません。
前述の大学との連携でも、「どうやったら都会の人たちがその地域に来るか」という間違った課題設定で学生にプランを作らせてしまうため、せっかくのマンパワーがほとんど地域に生かされずに終わる結果となってしまいます。
では、もう一歩踏み込んで、なぜ地域では担い手がいなくなってしまうのでしょうか?
本当の問題は若年人口の流出+高齢化
担い手不足の直接的な原因は、地域に魅力ある職場がないことを背景とした、若年人口の流出+高齢化であると思います。
地域はお客さんが少なくて困っているわけではない、ということの証拠に一つの例をご紹介します。最近とある観光施設から担い手不足により運営が危ぶまれているという相談を受けましたが、この施設では特別なプロモーションをしなくても、お客さんはいやでもたくさん来てしまう状況にありました。つまり、採算上は特に問題がない。しかしながら、観光というのはお客さんが来れば来るほど受け入れ側は大変になります。集客の問題ではなく、自分たちの力では受け入れ態勢を作れない、という問題で運営を断念しかけている現状が地域の観光には迫っていることがこの例からもわかると思います。本来はきちんとマーケティングすれば十分に存続しうるだけに非常にもったいないことが起きているともいえます。
この問題への処方箋は簡単ではありませんが、一つ言えるのは、これからは若者に選ばれる職場、または、人材をプールできる余裕を持った事業者がこれからの地域では求められていく、ということです。そのために、雇用者は働き手の待遇改善や魅力ある仕事づくりに励まないといけません。
最後に、以下の本は、現場での経験に裏打ちされた筆者(木下斉氏)が地域を変える鉄則を書いています。これから地域で活躍したい方はぜひ読んでみてください。
稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書)
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失敗するDMOと成功するDMOのたった一つの違い
近頃、地域の観光業界では、DMOという文句がよく出てきます。
観光業界の最先端で感じる「失敗するDMOと成功するDMOの違い」について考えてみたいと思います。
- DMOとは観光地域を経営する組織のこと
- DMOと観光協会って何が違うの?
- 失敗するDMOは組織づくりから始める
- 成功するDMOは事業からはじめる
- これからDMOに関わる方へ
DMOとは観光地域を経営する組織のこと
そもそもDMOって何でしょうか?特に観光と関係ない業界の人は知らない人も多いんじゃないでしょうか?
DMOとは、Destination Management/Marketing Organizationの略で、地域の「稼ぐ力」を引き出し、観光地域づくりを実現するための戦略を策定する法人で、観光地域経営組織とも呼ばれています。このDMOが今、地方活性化の一つの手段として注目されてきていて、2017年5月現在、大小含めて全国で145件のDMOが登録されています。
DMOと観光協会と何が違うの?
DMO=地域全体でプロモーション・マーケティングをする組織、と解釈すると、なんとなくこれまでの観光協会っぽいなぁと思う人もいるかもしれません。
一口に観光協会といっても、完全行政依存の観光協会から、自前の事業(花火大会やイベントのチケット販売など)で稼いで年間の予算の一部を稼いでいる観光協会もあります。DMOと観光協会の違いとされているのは、①行政区域(地理的範囲)に制約されない動きをすること、また、②行政のように公平性に縛られず、成果を上げるために動くこと、という部分があるみたいです。
失敗するDMOは組織づくりから始める
個人的に観光の最前線で自治体の担当者やすでに登録しているDMOの人たちと話していて、近い将来、ほとんどのDMOは単に補助金が止まったら停止して終わってしまうんじゃないかと思っています。
例えば、兵庫県豊岡市の「豊岡観光イノベーション」を例にとってみましょう。実はこの組織、代表者・副代表を現職の市長や副市長が兼任しています。
HPからは会員がすぐに確認できませんが、こちらを見ると、どんな組織になっているかよくわかりますね。では、なぜ現職の市長や副市長が兼任していてはいけないのでしょうか?
http://www.mlit.go.jp/common/001147987.pdf
地域の第三セクターなどでよくあることですが(そして、責任の所在が曖昧になりよく破たんしている…)、経営の一番大切なポジションである代表者を自治体の首長が兼任している状態で、公平性に縛られずに成果を上げられるでしょうか?
市長の給料はもちろん、税金から出ていて、選挙で選ばれますよね。一部の住民から不満が出れば、次の選挙で票が集まらずに困ってしまうような立場の人たちが代表または副代表になっていて、このDMOはしがらみにとらわれずに成果を追い求められるとは思えません。
国への体面を良くするために、組織づくりから始めてしまって、実際の事業のスピードなどを考えていないように思います。
成功するDMOは事業からはじめる
反対に、「日本一の星空」で有名な阿智村のDMO(株)阿智昼神観光局や有名なSETOUCHI U2の「ディスカバーリンクせとうち」は違うように思います。阿智昼神観光局は2006年から、ディスカバーリンクせとうちは2012年からと、そもそもDMO的な事業自体を日本版DMOという名前で国が推進する前から、自然発生的にスタートさせています。
そもそも事業というもの自体が、人に必要とされないと継続できない性質を持ったものだと思います。昔から近江商人は「三方よし」という言葉を心得にしていたと言います。三方というのは、「売り手」「買い手」「世間」のこと。これは、それぞれの立場の利害関係者から、「これはいいね」と感謝されるような事業にすることが、商売繁盛の秘訣であることを伝えています。
これからDMOに関わる方へ
そういう意味でDMOという名前なしに事業として継続してきていたところに、DMOという名前が与えられた事業と、そもそも国がDMOを推進し出してから作ったDMOっぽい即席の組織とでは、まるで事業としての継続可能性が違います。言い換えると、組織づくりからDMOをスタートすると失敗する、事業づくりからスタートすると成功するとも言えます。今後、DMOに関わる方がいたら、自分が関わるDMOはどちらなのか、意識してもらいたいと思います。
参考までにDMOの参考文献を上げておきますので、こちらも読んでおくと理解が深まると思います。
月刊事業構想 (2017年5月号『地域経済に活かす 新・観光ビジネス』)
- 作者: 事業構想大学院大学出版部
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別冊Discover Japan LOCAL 地方創生の切り札 DMOとDMCのつくり方 (エイムック 3439 別冊Discover Japan LOCAL地方)
- 作者: ディスカバージャパン編集部
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