地域観光の最前線ノート

地域の観光事業の最前線で事業に奮闘するブログです。

失敗するDMOと成功するDMOのたった一つの違い

近頃、地域の観光業界では、DMOという文句がよく出てきます。

観光業界の最先端で感じる「失敗するDMOと成功するDMOの違い」について考えてみたいと思います。 

 

  1. DMOとは観光地域を経営する組織のこと
  2. DMOと観光協会って何が違うの?
  3. 失敗するDMOは組織づくりから始める
  4. 成功するDMOは事業からはじめる
  5. これからDMOに関わる方へ

 

DMOとは観光地域を経営する組織のこと

そもそもDMOって何でしょうか?特に観光と関係ない業界の人は知らない人も多いんじゃないでしょうか?

DMOとは、Destination Management/Marketing Organizationの略で、地域の「稼ぐ力」を引き出し、観光地域づくりを実現するための戦略を策定する法人で、観光地域経営組織とも呼ばれています。このDMOが今、地方活性化の一つの手段として注目されてきていて、2017年5月現在、大小含めて全国で145件のDMOが登録されています。

www.mlit.go.jp

 

DMOと観光協会と何が違うの?

DMO=地域全体でプロモーション・マーケティングをする組織、と解釈すると、なんとなくこれまでの観光協会っぽいなぁと思う人もいるかもしれません。

一口に観光協会といっても、完全行政依存の観光協会から、自前の事業(花火大会やイベントのチケット販売など)で稼いで年間の予算の一部を稼いでいる観光協会もあります。DMOと観光協会の違いとされているのは、①行政区域(地理的範囲)に制約されない動きをすること、また、②行政のように公平性に縛られず、成果を上げるために動くこと、という部分があるみたいです。

 

失敗するDMOは組織づくりから始める

個人的に観光の最前線で自治体の担当者やすでに登録しているDMOの人たちと話していて、近い将来、ほとんどのDMOは単に補助金が止まったら停止して終わってしまうんじゃないかと思っています。

例えば、兵庫県豊岡市の「豊岡観光イノベーション」を例にとってみましょう。実はこの組織、代表者・副代表を現職の市長や副市長が兼任しています。

toyooka-tourism.com

HPからは会員がすぐに確認できませんが、こちらを見ると、どんな組織になっているかよくわかりますね。では、なぜ現職の市長や副市長が兼任していてはいけないのでしょうか?

http://www.mlit.go.jp/common/001147987.pdf

 

地域の第三セクターなどでよくあることですが(そして、責任の所在が曖昧になりよく破たんしている…)、経営の一番大切なポジションである代表者を自治体の首長が兼任している状態で、公平性に縛られずに成果を上げられるでしょうか?

市長の給料はもちろん、税金から出ていて、選挙で選ばれますよね。一部の住民から不満が出れば、次の選挙で票が集まらずに困ってしまうような立場の人たちが代表または副代表になっていて、このDMOはしがらみにとらわれずに成果を追い求められるとは思えません。

国への体面を良くするために、組織づくりから始めてしまって、実際の事業のスピードなどを考えていないように思います。

成功するDMOは事業からはじめる

反対に、「日本一の星空」で有名な阿智村のDMO(株)阿智昼神観光局や有名なSETOUCHI U2の「ディスカバーリンクせとうち」は違うように思います。阿智昼神観光局は2006年から、ディスカバーリンクせとうちは2012年からと、そもそもDMO的な事業自体を日本版DMOという名前で国が推進する前から、自然発生的にスタートさせています。

そもそも事業というもの自体が、人に必要とされないと継続できない性質を持ったものだと思います。昔から近江商人は「三方よし」という言葉を心得にしていたと言います。三方というのは、「売り手」「買い手」「世間」のこと。これは、それぞれの立場の利害関係者から、「これはいいね」と感謝されるような事業にすることが、商売繁盛の秘訣であることを伝えています。

阿智☆昼神観光局 – 昼神温泉郷公式観光サイト

www.dlsetouchi.com

これからDMOに関わる方へ

そういう意味でDMOという名前なしに事業として継続してきていたところに、DMOという名前が与えられた事業と、そもそも国がDMOを推進し出してから作ったDMOっぽい即席の組織とでは、まるで事業としての継続可能性が違います。言い換えると、組織づくりからDMOをスタートすると失敗する、事業づくりからスタートすると成功するとも言えます。今後、DMOに関わる方がいたら、自分が関わるDMOはどちらなのか、意識してもらいたいと思います。

参考までにDMOの参考文献を上げておきますので、こちらも読んでおくと理解が深まると思います。 

月刊事業構想 (2017年5月号『地域経済に活かす 新・観光ビジネス』)

月刊事業構想 (2017年5月号『地域経済に活かす 新・観光ビジネス』)

 

 

別冊Discover Japan LOCAL 地方創生の切り札 DMOとDMCのつくり方 (エイムック 3439 別冊Discover Japan LOCAL地方)